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人間は大概似たもんだ。腹が立てば喧嘩(けんか)の一つぐらいは誰でもするだろうと思ってたが、この様子じゃめったに口も聞けない、散歩も出来ない。そんなむずかしい役なら雇(やと)う前にこれこれだと話すがいい。おれは嘘(うそ)をつくのが嫌(きら)いだから、仕方がない、だまされて来たのだとあきらめて、思い切りよく、ここで断(こと)わって帰っちまおうと思った。
2009/08/14(金) 13:44 No.3 編集 削除
停車場はすぐ知れた。切符(きっぷ)も訳なく買った。乗り込んでみるとマッチ箱のような汽車だ。ごろごろと五分ばかり動いたと思ったら、もう降りなければならない。道理で切符が安いと思った。たった三銭である。それから車を傭(やと)って、中学校へ来たら、もう放課後で誰(だれ)も居ない。宿直はちょっと用達(ようたし)に出たと小使(こづかい)が教えた。随分(ずいぶん)気楽な宿直がいるものだ。校長でも尋(たず)ねようかと思ったが、草臥(くたび)れたから、車に乗って宿屋へ連れて行けと車夫に云い付けた。車夫は威勢よく山城屋(やましろや)と云ううちへ横付けにした。山城屋とは質屋の勘太郎(かんたろう)の屋号と同じだからちょっと面白く思った。
2009/08/14(金) 13:43 No.2 編集 削除
ひろくん メール ホーム
くだらないから、すぐ寝(ね)たが、なかなか寝られない。熱いばかりではない。騒々(そうぞう)しい。
2009/08/14(金) 13:44 No.1 編集 削除
ジーコ メール ホーム
失敬な奴だ。嘘(うそ)をつきゃあがった。それから下女が膳(ぜん)を持って来た。部屋は熱(あ)つかったが、飯は下宿のよりも大分旨(うま)かった。給仕をしながら下女がどちらからおいでになりましたと聞くから、東京から来たと答えた。
2009/08/14(金) 13:44 No.2 編集 削除
けんじ メール ホーム
何だか二階の楷子段(はしごだん)の下の暗い部屋へ案内した。熱くって居られやしない。こんな部屋はいやだと云ったらあいにくみんな塞(ふさ)がっておりますからと云いながら革鞄を抛(ほう)り出したまま出て行った。仕方がないから部屋の中へはいって汗(あせ)をかいて我慢(がまん)していた。
2009/08/14(金) 13:44 No.3 編集 削除
学校は昨日(きのう)車で乗りつけたから、大概(たいがい)の見当は分っている。四つ角を二三度曲がったらすぐ門の前へ出た。門から玄関(げんかん)までは御影石(みかげいし)で敷(し)きつめてある。きのうこの敷石の上を車でがらがらと通った時は、無暗(むやみ)に仰山(ぎょうさん)な音がするので少し弱った。途中から小倉(こくら)の制服を着た生徒にたくさん逢(あ)ったが、みんなこの門をはいって行く。中にはおれより背が高くって強そうなのが居る。
2009/08/14(金) 13:43 No.1 編集 削除
教員が控所(ひかえじょ)へ揃(そろ)うには一時間目の喇叭(らっぱ)が鳴らなくてはならぬ。大分時間がある。校長は時計を出して見て、追々(おいおい)ゆるりと話すつもりだが、まず大体の事を呑(の)み込んでおいてもらおうと云って、それから教育の精神について長いお談義を聞かした。
2009/08/14(金) 13:43 No.1 編集 削除